食品分析を行う意義とは

人の生命維持や健康維持、健康増進のためには、食品の摂取は欠かすことができませんが、安全で安心なものを提供してもらう必要があります。そのためには、食品衛生は欠かすことができないものです。ここでは食品衛生をする目的について紹介します。

また、食品衛生の手法であるHACCPについて取り上げる他、食品分析が役立つ場面についても解説します。

安心して食べられるのは食品分析あればこそ!数ある分析方法をピックアップして紹介

食品衛生をする目的とは

人の生命維持や健康維持、健康増進のためには、食品の摂取は欠かすことができません。現在では食べ物は単に生命維持のみだけではなく、健康増進のため栄養的に価値のあるものであると同時に、有害な物質を含んでいないかなど、衛生的に安全なものでなくてはいけません。

そのため、食物は生育や生産や製造から、最終的に人に摂取されるまで、すべての段階において安全性や健全性が求められ、品質の劣化を防ぐために必要とする手段を講じなければなりません。このことから、日本国内には食品衛生法という法律が存在します。

食品衛生法は、人々が健康かつ安全に食べ物や飲み物を摂ることができるように、必要な規制や措置を定めて、食品汚染や食中毒などの問題を防止しようという目的で定められています。防止するための方法として、食品添加物や器具、包装容器などの情報の開示などを色々と規定しているのです。

食品分析とは

食品衛生法では、飲食物を清潔で衛生的に扱うことを大前提として定めています。つまり腐っているもの、人体に有害な物質が含まれているもの、病原性微生物により汚染されているもの、異物が混入されたものであってはならないのです。

このような安全が確保できない飲食物は、販売したり製造したりすることはできません。当然、輸入や加工、貯蔵、そして陳列することもダメです。また、食品添加物においても、それが認められているもの以外の化学的合成品を食品へ添加することは一切禁止されています。

さらに、厚生労働大臣は、食品または添加物の基準や規格を定めることができます。基準や規格が定められた食品や添加物については、その基準や規格に合わないモノの販売は一切禁止されているのです。

このように、人の健康を損なう可能性があるものは、製造や販売してはいけませんが、その食品が人の健康を損なうものかどうかは、実際に分析してみないと分からないことが多くあります。そこで、食品の安心や安全を担保する目的で食品の分析を行うことがあるのです。

食品分析とは、数ある複雑な食品について、目的の成分がどの位含有されているか、或いはどのような微生物汚染が含まれているかなどを検査分析する方法です。

食品衛生管理の手法であるHACCP

食品衛生管理のためには食品分析が欠かせませんが、食品衛生管理にはHACCP(ハサップ)と呼ばれるものが広く認知されています。HACCPとは、危害分析(HA)・重要管理点(CCP)方式と呼ばれる食品衛生管理の手法です。

日本国内では1995年の食品衛生法の改正に伴い、新たに総合衛生管理製造過程で、HACCPが承認制度として採用されました。HACCPは、主として最終製品の検査によって安全性を保証しようとする今までの食品管理方法とは異なり、製造における重要な工程を連続的に管理します。

そうすることで、個々の製品の安全性を保証するのです。つまりHACCPは危害発生防止に焦点を当てた、新しい食品衛生管理方式ということができます。また、HACCPは食品工場のあらゆる部門のスタッフでチームを作って活動します。

その結果、食品製造に対する安全意識が組織全体で高まる効果が生じるのです。HACCP方式では、食品の製造や加工工程の各ステップで発生するかもしれない微生物汚染などの危害について調査分析します。分析した結果、製造工程のどの段階でどのような対策を講ずれば良いかという重要管理事項を設定します。

そして、設定項目が確実に守られているかどうかを常にモニターするシステムです。HACCPはアメリカが1960年代に宇宙食の高度の微生物学的安全性の確保を目的として開発されたものでありますが、この概念は微生物以外でも有害有毒物質の付着や混入、或いは品質や衛生上問題となる異物対策についても適用されているのです。

消費期限や賞味期限を設定するために食品分析をする

先述した通り、食品分析は食品の安心や安全を担保する目的で行われます。食品の安心や安全というと、病原微生物や有害物質などが含まれていないか調べるために行われるというイメージがあります。それ以外でも食品分析が役立つことがあります。

それは、食品などの消費期限や賞味期限を設定するという場面です。製造した食品などがどれくらい日持ちするのかということは、製造者や消費者双方にとって、とても重要なことです。しかし、製造者側が適当に消費期限や賞味期限を定めてしまっては、食品の安心や安全を担保することはできません。

そこで科学的な根拠データを得るために、食品分析を行って消費期限や賞味期限を定めるのです。科学的な根拠のもとに定められた消費期限や賞味期限であれば、消費者側も安心して食品を手にすることができるのです。

食中毒や商品に対するクレームが出た場合も食品分析は役立ちます。

食品衛生管理の手法が高度化しても、不幸にも食中毒は発生することがあります。また、消費者側から商品に対するクレームがつくこともあるでしょう。そのような場合に、食品分析を行って科学的なデータを示すことはとても重要なことなのです。

食中毒にしろクレームにしろ、消費者側は何かしらの科学的な原因を求めています。分析結果を付した確実性の高い報告が得られたら、原因不明という不安が払拭することができます。さらに、クレームが生じたという問題に対しても、分析結果をもとに原因究明につながる上、それに対しての改善策を講じることが可能になります。

その結果、その後のクレーム減少につながっていくのです。食品を摂取する消費者側としては、安全で安心なものを求めています。何の原因かが分からなくて食中毒を起こしたり、商品に対するクレームが起きたりしてしまったら、その商品に対しては不信感しか生まれません。

製造者側としては、消費者に安心と安全な食物を提供する義務があります。消費者が安心して食品を購入するためには、食品分析は欠かせないものなのです。消費者のニーズの応えることが、製造者側の社会的信頼に応えることになり、その1つの方法として食品分析はあるのです。

このことからも食品分析に対する異議はあると言えるでしょう。